話し足りない一日の終わりに

おば

独り暮らしをしている伯母に会いに行った。

伯母は、私が子供の頃は家族で山の中に住んでいた。

なんか、山小屋のようなところで、飲食店をやっていたと思っていたんだけど、会ったときに聞いたら、そのときはやってなかったよ、とのこと。

伯母が忘れているんじゃないかなあ。犬やらなんやらいて、山菜うどんのようなものを出してもらった気がするんだよなあ。

しかしそれは私が小学生にあがるかあがらないかぐらいのことで、頭の中のその映像はどんどん薄くなって今にも消えて行きそうで、私の記憶もあやしい。

ところで、その店の二階で、ある日宴会があって、親戚でもない知らない人ばかりだったが、私がまだ幼くてかわいらしかったのか、かわいがっていただいたことがある。

知らないおじさんが、どうやらお金持ちらしく、「おっちゃんがどこでも連れて行ってあげるで、どこに行く?」と言ってくれたので、「石垣島に行きたい〜」と言ったらおじさんは「よっしゃ、連れて行ってあげよ!」と言った。

ホステスかっ。

その頃、石垣島のお土産に、小さな瓶に入った星の砂を誰かにもらったのがとても嬉しくて、毎日見ていたから、石垣島というところに行きたくてしょうがなかったのであった。

石垣島の写真も見たことないのに、砂だけで。

そして、なぜ40年近くたった今になってもこの話を覚えているかというと、私はけっこう長いことこの約束が本当だと思っていて、「いつ連れて行ってもらえるのだろう!」と楽しみにしていたからなのである。

だからね、子供にいいかげんな口約束は絶対にしてはいけない!

 

・・・で、訪ねた伯母は元気にしていたので、大変安心した、という話。